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ゼオライト研究発表会

予稿集

From October 4, 2002 /
Last update: June 9, 2009

Q1.ゼオライトとは?


A1.ゼオライト(zeolite)は、粘土鉱物の一種として、1756年に初めてCronstedtによる発見され、規則的なチャンネル(管状細孔)とキャビティ(空洞)を有する剛直な陰イオン性の骨格からなるアルカリまたはアルカリ土類金属を含む含水アルミノケイ酸塩です。我が国でも国内各地で天然の鉱物資源である天然ゼオライトを産出しています。また、数多くのゼオライト及びその類似物質が人工的に合成されており、こうした合成ゼオライトの一部は工業的にも広く用いられています。
ゼオライトは一般に

(M,M1/2)m(AlmSinO2(m+n))・xH2O, (n≧m)
M: Li+, Na+, K+, etc 、 M: Ca2+, Mg2+, Ba2+, etc 

の組成で表され、陽イオンが、アルミノケイ酸塩の骨格の負電荷を補償します。
構造の基本的な単位はSiO4あるいはAlO4の四面体構造(あわせてTO4四面体)であり、これらが3次元方向に無限に連なり、結晶を形成します。この結晶は多孔質で、細孔の直径が通常0.2~1.0 nm(1nm=1×10-9m)程度であるため、その細孔径よりも大きな分子は進入することはできないという分子ふるい作用(molecular sieve)を有しています。ゼオライトはその骨格構造に由来する細孔による分子ふるい効果に加え、固体酸性、イオン交換能、触媒能、吸着能などの特性をもっており、これらの物性が学問的な研究の対象となるのと同時に、その機能を活かして工業触媒、吸着剤、ビルダー(洗剤助剤)、乾燥剤、イオン交換剤、さらには排水処理、肥料、および、飼料添加物など実に幅広く利用されています。また、近年では自動車や発電所・工場から排出されるガスの除去剤としても利用が広がっています。


(図 天然ゼオライトの例(クリノプチロ ライト))


(MFI型ゼオライト)

Q2.ゼオライトの骨格構造?


  
A2.ゼオライトの骨格構造は、International Zeolite Association(国際ゼオライト学会)によりデータベース化されており、アルファベット大文字3個からなる構造コードが与えられています。(http://www.iza-structure.org/databases/)。この構造コードは骨格の幾何構造のみを指定するものであり、組成や格子定数が異なっても幾何構造が等しければ同じ構造コードに含まれます。現在その数は2011年2月時点で日本からの新規ゼオライト二つ(構造コードGONとCDO)を含め194種類です。しかし、工業的に利用されているゼオライトはわずか10種類程度です。代表的なゼオライトの細孔の幾何学的データと骨格構造を幾何学的データと骨格構造を下に示します。幾何学的データは、チャンネルの方向、員環数、孔径の大きさ(長径と短径をÅで書く、1Å=0.1nm=1×10-10m)、チャンネルの次元数を示す星印の数で一組をなしています。もし、チャンネルが2組あれば順に書き、互いに交差していない場合は縦線、交差している場合は矢印で両者の関係を表しています。

構造
コード

名称
理想化学組成
細孔構造
骨格構造

LTA

A型
|Na+12(H2O)27|8 [Al12Si12O48]8
<100>8 4.1x4.1***

FER

フェリエライト
|Mg2+2Na+2(H2O)18|[Al6Si30O72]
[001]10 4.2x5.4*<->[010]8 3.5x4.8*

MWW MCM-22
| H+2.4Na+3.1|[Al0.4B5.1Si66.5O144]
⊥[001]10 4.0x5.5**|⊥[001]10 4.1x5.1**

MFI

ZSM-5
|Na+n(H2O)16|[AlnSi96-nO192]
{[100]10 5.1x5.5 <->[010]10 5.3x5.6}***
シリカライト
骨格構造中に Alを含まないだけで、細孔構造はZSM-5と同じ

MOR

モルデナイト
|Na+8(H2O)24|[Al8Si40O96]
{[001]12 6.5x7.0* <-> {[010]8 3.4x4.8
<-> [001]8 2.6x5.7}*

LTL

L型
|K+6Na+3(H2O)21|[Al9Si27O72]
[001]12 7.1x7.1*

FAU

Y型、X型
|(Ca2+,Mg2+,Na+2)29(H2O)240|[Al58Si134O384]
<111>12 7.4x7.4***

*BEA

ベータ型
|Na+7|[Al7Si57O128]
<100>12 6.6x6.7**<->[001]12 5.6x5.6*

   注1)<hkl>とは、[hkl]と結晶学的に等価な方向をすべて表す。
   注2)*BEAの*は3種の構造の類似した多型の混晶であることを表す。
   注3)骨格構造はゼオライト中のT原子(ケイ素やアルミニウム)の位置を線でつないで
      表示したもので、酸素原子、水、陽イオンは省略してあります。


(表 各種ゼオライトの理想化学組成、細孔の幾何学的データおよび骨格構造
出典:Ch. Baerlocher, W.M Meier and D.H. Olson,
“Atlas of Zeolite Framework Types”, Fifth Revised Edition, Elsevier, (2001).)


(図 様々な細孔構造を持つゼオライト)

Q3.ゼオライトの吸着特性?


  
A3.ゼオライトはその構造固有の細孔を有しており、通常0.2~1.0 nm(1nm=1×10-9m)で分子径に相当するマイクロ孔径を持った多孔体です。ゼオライトの細孔は一般に、出入り口の細孔径によって大まかに分類され、下図に示されるような分子ふるいの作用を生じます。一方、その細孔径が分子オーダーであるため、細孔内に入った分子がその細孔内に吸着し、留まる現象が生じます。これがゼオライトの吸着の原理で、ゼオライト種によってその吸着特性は大きく変化します。ゼオライトの吸着特性に及ぼす様々な因子を以下に示します。
(1) 細孔構造(次元、員環数、形)
(2) イオン交換・化学反応による細孔径制御
(3) Si/Al比の相違による親疎水性制御
(4) 吸着分子と吸着剤の極性
(5) 吸着分子の径と形
(6) 温度による拡散係数の変化
このように、様々な因子に依存するゼオライトの吸着特性は大幅に制御することが可能です。


(図 分子ふるい作用)


(図 種々のゼオライトの細孔径と分子の分子径との関係)

Q4.ゼオライトのイオン交換能?


A4.ゼオライトは、構造中にSiO4およびAlO4四面体(以下両者をまとめてTO4四面体と呼ぶ)が頂点酸素を共有し3次元に無限に連なった網目状構造を有する結晶性含水アルミノケイ酸塩です。このTO4四面体の結合形式により3次元網目構造の隙間に様々な形状のミクロ細孔が存在しており、この空隙に結晶水(吸蔵水)、陽イオンが取り込まれています。結晶水を含んだゼオライトは安定ですが、脱水することによりゼオライトは強い吸着力を示し吸着剤として利用が可能です。また、T原子の全てがSiであるケイ酸塩であれば電気的に中性ですが、Si4+の一部が低原子価原子であるAl3+で同型置換されているため負の電荷が生じます。その電荷を中性に保つため、Al近傍に陽イオンとしてアルカリ、アルカリ土類金属あるいは有機カチオンが存在します。ゼオライト中の陽イオンは比較的自由に結晶細孔内を移動できるため、液相中で可逆的にイオン交換することが出来ます。
このイオン交換特性を用い、農林水産分野や家庭用合成洗剤の洗浄力を高めるためのビルダーとして応用されています。


(図 イオン交換能)

Q5.ゼオライトの触媒特性?


  
A5.ゼオライトを触媒として用いる反応の多くは、酸としての性質を利用しており、ゼオライトへのブレンステッド酸点(酸性OH基)の導入は主に下図に示すようにして行われています。すなわち、細孔内の陽イオン(Na+)をNH4+でイオン交換した後350℃以上で焼成することによりプロトン型ゼオライトが調製されています。架橋水酸基(Si(OH)Al)は室温ではOH基として存在するが、高温ではH+を与えます。また、細孔と分子の幾何学的関係により反応の速度や選択性が影響を受ける形状選択性の発現もゼオライト触媒の大きな特徴です。
形状選択性の発現機構は一般に3種類に分類出来ます。
(1) 反応物規制選択性:反応分子の大きさにより決定される選択性で、ゼオライト細孔内に入ることができない、または入りにくい分子の反応性は規制され、容易に入ることが出来る分子が優先的に反応することができます。
(2) 生成物規制選択性:反応によりゼオライト細孔内で生じた分子のうち、細孔内拡散が十分早く結晶外に出ることが出来る分子だけが生成物として得られ、細孔外に出ることが出来ない大きな分子は小さな分子に変換してのちにはじめて細孔外に出ることが出来ます。
(3) 遷移状態規制選択性:反応物ならびに生成物の分子の細孔内拡散は阻害されていないにもかかわらず、かさ高い遷移状態を経由するある種の反応が起こりません。ゼオライトの反応場を利用した反応規制です。


(図 固体酸性の発現機構)
   
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